一迅社のポップカルチャーマガジン『Febri』が2020年9月号(vol.62)で休刊になると、誌面末尾で発表された。12月からweb版として再スタートが予定されているらしいが、具体的な情報はWEBでは未だ公開されていない。
僕は「リコメンドガール」というインタビュー記事をだいたい月イチで担当させていただいていた。また不定期ながら、コラム記事の執筆やVTuber特集号の取材などに関わらせていただいた。(編集者として面倒を見てくださった、Sさん、Mさん、Iさんには感謝の念に堪えません)今、自分がMoguLiveというメディアでVTuberの取材を続けているのも、間接的にはこの雑誌の影響なので、そういった点でも非常にありがたいメディアだったと思う。
『Febri』は一般的なカルチャー誌に比べても、ひとつのコンテンツに対して深堀りした内容で構成され、特にアニメの現場関係者の方への取材は真摯に向き合っていることが伝わってくるものだった。それだけに今回の休刊はライターとしてだけではなく、1人の読者として残念だ。できればこれまでのアーカイブが、今後のカルチャーを繋いでいくような人たちにまで届いていてくれると嬉しいのだが…。
『Febri』での仕事を振り返ってみると、アイドルの方々へのインタビューが特に印象に残っている。でんぱ組.incの鹿目凛さん、バンドじゃないもん!MAXX NAKAYOSHIの恋汐りんごさん、ZOCの藍染カレンさん、純情のアフィリアの勇希クロエさんなど…どの方もこちらの質問に真摯に答えてくださった。自分がこれからどういった道へと進もうとしているのか、迷いや悩みも含め正直に打ち明けてくださったからこそ、読者の心を動かすような記事にできたのは間違いない。
正直この連載を担当するまで、真正面からアイドルの方へインタビューする経験はあまりなかった。AKB48のチームエイトのグループ取材の執筆は担当していたものの、聞き手は別の編集者さんが担当していた。だいたいの流れやテンションは掴めていたけれど、いざ自分が聞き手になると、どこから分け入っていったものか、かなり悩んだのを覚えている。アイドルオタクでも業界の事情通でもない自分が、いらぬ地雷を踏み抜かないかと恐怖していたのだ。
ただ最初に担当した鹿目凛さんのインタビューで心配や恐れはほとんど払拭された。というのも、鹿目さんが「今自分はファンのことをこう考えていて、だからこういうことを届けたいと思っている」というアイドル活動への向き合い方の話をしてくださり、「え!?そんなところまで考えていたのか」と驚かせてくれたからだ。この驚きを文章にまとめれば、鹿目さんのファンでない人にも届く。そういった確信があった。(※「偏見かもしれませんが~」から続く文章はそういうことです)
だから、その後のインタビューの指針として「アイドルという職業を選択した人に、現場で経験したことや感じたことを語ってもらおう」という方向に定めた。いわゆる職人へのインタビュー的な姿勢に気持ちを切り替えたのである。
逆に言えば「アイドルオタクとしてのスタンスで話を聞かない」を徹底したともいえる。例えば「アイドルの方を愛称で呼ばない」「(当人が好んでいたとしても)オタクの身内ノリネタ的なワードを使わない」「プライベートに不必要に踏み込まない」「『かわいい』や『美人』といった言葉を使わない(別の言葉に置き換える)」といったことだ。
「何を当たり前な…」と思われる人も多いかもしれないが、自分が他の現場で立ち会ったアイドル取材では、わりとこのラインを踏み越えて話す人も一定数いるように感じていた。現場だけではなく誌面に乗ったインタビューからもそういったスタンスは読み取れて、結果的にファンを喜ばすだけの内容になっている記事も散見された。(多分、「自分が一番このアイドルを知っている!」という我が出てしまうと、そうなってしまうんだと思う)
自分はそういうものとはなるべく距離を取ろうという気持ちも少なからず(大いに?)あったと思う。あくまで、インタビュアーとして知らないことを聞き、ひとつひとつの言葉に驚いたり関心したりして「どうして?」と返していく流れを守ろうという感じだった。
もちろん相手のことを全く知らないままに取材することは無い。むしろ「何をやってきたか」を事前によくチェックするようにしている。もっと具体的にいうと「誰かのリクエストでやることになった仕事」と「自分から自発的にやりはじめた仕事」の2種類に分けて、それぞれを深堀りしていく。
すると「今やりたいと思っている方針」と「現状の活動」の距離感がどの程度かがちょっと分かってくるので、それをもとにインタビュー中に質問を投げていくといった具合だ。(もちろん全部が全部そうではないことにはご留意いただきたい)
他にも色々と心がけたことはあるのだけど、言語化しにくい類のものなのでこれくらいに。こういった気づきもアイドルの方々から学ばせていただいたところが大きいと思っている。重ね重ね感謝の念に堪えません。
最後に、恋汐りんごさんに取材した際にとても思い出に残っているエピソードをひとつ。雑誌用の撮影を終えて、席に着いた恋汐さんが開口一番「インタビュー屋さん」と僕に声をかけてくださった。これまでライターだとか編集者だとか呼ばれることはあっても「インタビュー屋さん」と呼ばれたことはなくて、「あ、自分の職業ってそういうものだったんだ」とハッとさせられた。つくづく「ライター」って何だかよく分からない職業だと思っているだけに、この呼び名は気に入っている。
今後もアイドルの取材が入ってくるのかは全然分からないが、取材の際は「インタビュー屋さん」として相手に向き合っていきたいと思っている。