10月29日(土)、お仕事での繋がりをきっかけに、東京国際フォーラムで開催された「バンドじゃないもん!MAXX NAKAYOSHI」の10周年ワンマンライブを観覧させていただいた。これまで、バンドじゃないもん!については、2度ほど取材(1度目はリニューアル前の「ロガール」で、下北沢ガレージライブレポ、2度目は一迅社「Febri」での恋汐りんごさんインタビュー)させていただくことがあったが、その熱量は長年追い続けているファンの方々には到底及ばないものであることは事前にご容赦いただきたい。

それで、どうだったのかと言えば、非常に良かった。もう本当に素晴らしかった。歌に、ダンスに、時折挟まる楽器の演奏に……とにかくエネルギッシュに動き回るメンバーの迫力は凄まじいものがあったし、途中でダレるといったことが一切無かった。動きのひとつひとつが洗練されているので「あ、ここ大変そう」とか「激しく動いてるけど大丈夫かな?」といった余計な心配や邪念が湧かず、終始ずっと良質なエンターテイメントを体験している幸せの中にいた。
それもそのはず。10年……10年なのだ! このバンドじゃないもん!は結成から10年で、リーダー以外の最古参メンバーでも9年目。現在の6名メンバーになったのが2014年だから、それでも8年。それ以降は誰一人欠けずに今日まで活動を続けているわけである。しかも、結成時期は「アイドル戦国時代」と言われ、グループアイドルが次から次へと立ち上がって、どこもかしこもライブをやっていた時期と重ねっているわけで、決して温温(ぬくぬく)とした環境で継続していたグループでは無かったのである。
そもそも、短期間での引退(卒業)が一般化していて、アイドルという職業を「次へのワンステップ」と考えるような人も多い環境の中で、10年続けられるのは、間違いなく偉業だ。その間、パフォーマンスを磨き、ファンへのサービスを怠らず、メンバーとも協力し合っていたから今まで続いているわけで、そんなグループのライブがすごくないわけが無い。
もちろん、これは途中で止めていったアイドルグループを貶めることを意図していない。個人個人でやりたいことは変化していくこともあるし、次から次へと新しいことに挑戦するのも、立派なことだと言える。ただ、個人的には「10年輝き続けられる」というパワーには、どうしても惹かれるものがある。やっぱり、どこかで心折れて諦めてしまって、好きだったことや夢中になっていたことを止めるのが「当たり前のこと」だからで、そういった小さな挫折を何度も何度も積み重ねて自分は大人になったわけで、でも彼女たちはその間もずっと歌って踊っていたわけで……。うん、やっぱり、バンドじゃないもん!は偉いと思う。
自分は今の仕事をこれから「10年」続けられるだろうか。そもそも自分の現在の取材対象は10年どころか「元年」だとか「まだ早すぎる」だとか言われている業界で、活動している人たちも総じて若い。特にVTuberは(※すあださんなどの配信者といった例外を抜きにすれば)まだ10年続けられている人がいない。5年で「ベテランの風情が出てきた」みたいなことを言っているファンもいるけど、やっぱりまだまだ期間が短いし、引退や活動休止する人たちも多い。そのたびに「早すぎる!」と思うし、ジェットコースターのような激しい業界変化に「大丈夫か?」と不安になることもある。
でも、自分は楽しく活動しているクリエイターを見るのが好きだし、応援したくなるので、例え活動形式が変わったとしても、執筆なり編集なりで応援していきたいと思う。ただ、自分自身だって果たして、こうやってキーボードを打ち続けられるだろうか……。ひょっとしたら「物書き」なんて仕事自体が消滅しているかもしれない。やむを得ない転職で全然望まない仕事をしているかもしれない。心が折れて仕事自体できなくなっているかもしれない……。
そんな中だから「10年続けられる人たちがいる」ことに、強く心打たれてしまったのかもしれない。以前、恋汐りんごさんにインタビューした際、「自分の身体が無くなっても、ファンにずっと『恋汐りんご』という存在を残し続けたい」といった意味のことを語ってくださったことを覚えているが、それだけの覚悟と強い想いがあって活動を続けられていることに、今回改めて気づかされたのだ(余談、インタビューの時は「VTuberみたいですね」と軽く返答してしまったが、まさかその後本当に恋汐さんがVTuber姿をお披露目するとは思わなかった)。
「10年続ける」。あのライブの後、そんな標語みたいなものが自分の頭にくっきりと刻まれたことだけは確かだ。それに向けて何をどうしていけばいいのか、それをモヤモヤと考えている。